コラム

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赤い首輪と靴を履いた白い犬がおすわりしている様子

犬が足先を舐める原因と対策

もくじ

はじめに:犬が足先を舐めるのはなぜ?

ワンちゃんが足先を頻繁に舐めていると、「ストレスかな?」「かゆいのかな?」と心配になりますよね。
体を舐める行動は、かゆみ行動のひとつと考えられがちですが、実際にはかゆいときはもちろん、痛みや違和感があるとき、あるいは舐めていると落ち着くから、といった理由でも見られるものです。
寝る前に自分を落ち着かせるために少し舐める程度なら問題ありません。しかし、毛が薄くなり、地肌が見えるほど舐めてしまう場合には、なぜ舐めているのか原因をきちんと突き止めるのが大切です。

犬が足先を舐める6 つの主な原因

足を舐める犬

ワンちゃんが足先を舐めてしまう背景には、様々な原因が隠れています。

原因1. かゆみを伴う皮膚病(アトピー・食物アレルギー)

アトピー性皮膚炎や食物アレルギーなどのアレルギー性皮膚疾患や、皮膚の常在微生物が増えたときに、かゆみから足先(特に裏)を舐めることがあります。

アトピー性皮膚炎:
主にハウスダストマイト(室内に生息しているダニ)など、環境中の物質に対してアレルギー反応を起こすことで皮膚にかゆみがおきます。掻くことで皮膚炎が起き、初めてかゆみや皮膚炎が見られるのは生後6 ヶ月~3 歳ごろが多く、症状が繰り返されることも多いです。

食物アレルギー:
食物中の成分に対してアレルギー反応を起こしてしまう病気です。足先など体のかゆみ以外にも、下痢(軟便やおならが多い)や嘔吐などの消化器症状が見られることもよくあります。

原因2. 皮膚感染症(常在菌やカビの増殖)

皮膚には健康なワンちゃんでも、ブドウ球菌やマラセチアといった常在微生物(常在菌やカビの仲間)がいます。
しかし、何かをきっかけにこれらの常在微生物が増えすぎてしまうと、かゆみを引き起こすことがあります。湿度や気温の高い梅雨や夏によく見られます
また、アトピー性皮膚炎などのかゆい皮膚病があると、皮膚バリアがもともと弱いことや、掻いたり舐めたりすることによる刺激で、微生物が過剰に増えやすくなってしまいます。

原因3. 足の裏の刺激や異物

お散歩などで小さな石が肉球の間に入ったり、硬いアスファルトで肉球が傷ついたり、どこかに爪をひっかけてケガをしたりしたことなどをきっかけに、違和感から足先を舐めることもあります。
この場合、「今までは何もなかったのに、散歩後から急に舐め始めた」という姿が見られるでしょう。
そのような場合には、肉球や肉球の間、爪をしっかりと確認してあげてください。

原因4.トリミングによる影響

トリミング後からかゆみが見られる場合、様々な原因が考えられます。

  • シャンプーやトリートメント、保湿剤などが肌に合わなかった
  • シャンプーやドライヤーの温度が高すぎたことによる肌の乾燥
  • ご褒美のおやつが合わなかった(食物アレルギー)
  • 他のワンちゃんからノミや疥癬、耳ダニなどの外部寄生虫が感染した
  • カットした短い毛が残っていてチクチクする

しかし、足先だけを特に舐める場合に一番多いのは「バリカン負け」です。
肉球の周りの毛をえぐるように深く刈り取ってしまうと、どうしても皮膚に小さな傷がついてしまいます。また、金属アレルギーの子は、傷がつかなくてもブレード(刃)が皮膚に当たるだけでかゆみが出てしまうこともあります。
さらに、アトピーのワンちゃんは、もともと皮膚のバリア機能が低いことが知られています。意外に思われるかもしれませんが、毛も皮膚のバリア機能の一部です。
毛を短く刈りこんでしまうと、本来は毛によってブロックされていた環境中のアレルゲン(アレルギーの原因物質)が、皮膚に直接接触しやすくなります。また、毛がある状態なら、舐める刺激からも皮膚を守ってくれます。そのため、お肌の弱い子に関しては、肉球の周りの皮膚はバリカンをかけず、ハサミで出ている分をカットする程度にすることをお勧めします。

原因5. 痛み(ケガや関節炎など)

ワンちゃんは、体のどこかに痛みがある場合も、その場所を舐めることがあります。
例えば、おなかが痛いとき、人ならおなかをさすりますが、ワンちゃんはさすることができない代わりに舐めることがあります。
同様に、関節炎や骨折、ねん挫などで足を痛めている場合にも、足先を舐める仕草が見られることがあります。
この場合、歩き方や走り方にも変化が見られることも多いため、「足をあげて歩いていないか」「歩き方や走りかたがぎこちなくないか」など、よく観察してみましょう。
春や秋は気候が穏やかで散歩に最適な季節ですが、肉球にとっては「アレルゲン」や「異物」に注意が必要です。草むらや公園には花粉や雑草、落ち葉などが多く、肉球や指の間に入り込んで炎症を起こすことがあります。また、川辺や湿った場所で遊ぶと、指間炎などの皮膚トラブルにつながることもあります。

原因6. ストレス

足先を舐めていると、「ストレスではないか」と疑われることがよくあります。
皮膚科でストレスが主な原因の皮膚病というと「肢端舐性(したんしせい)皮膚炎」という病気があります。これはストレスで、手根骨前側(手首の甲側)を舐め続けてしまう病気です。ただし、これは足先というよりは「足首」に症状が出ることが多いです。
一方で、アトピー性皮膚炎のある子では、ストレスがアトピーの症状を悪化させることで、結果的に足先の舐めが悪化することがあります。
診療をしていると、今までアトピーのコントロールがうまくいっていた子が、大きな地震の後から、あるいは家族に赤ちゃんが生まれてから、といった大きなストレスがかかることで、かゆみが悪化してしまったという場面に遭遇します。このような場合には、ストレスケアも重要な治療の1 つになります。

舐める行動を放置するリスクと対策

舐め続けるとどうなる?

ワンちゃんが足先を舐めるのには、これまでお伝えしたように様々な理由があります。しかし、理由が何であれ、舐める行動が続くと、皮膚の中で深刻な問題が起きることがあります。
舐め続ける刺激で、毛包(毛を包む袋のような構造)の中で毛が折れてしまうことがあります。皮膚の表面に出ている毛と違い、皮膚の中で折れてしまった毛は、自分の毛であるにもかかわらず「異物」として認識されてしまいます。
異物と認識された毛は「異物肉芽腫(にくがしゅ)」を引き起こすことがあります。肉芽腫とは、慢性的な炎症が起きた結果できる「しこり」のようなものです。
異物肉芽腫ができてしまうと、異物(この場合は折れた自分の毛)と肉芽腫を外科的に切除する必要が出てきます。そのため、なるべく舐める行動は続けさせないように工夫することがとても大切です。

対策1.まずは動物病院で原因を特定する

舐めたくなるような皮膚病や痛みなどがないか、まずはきちんと動物病院で診察を受け、必要であれば治療を受けましょう。飲む薬だけでなく、塗り薬や保湿剤、皮膚に配慮したごはんやサプリメントなど、多角的にケアしてあげることが大切です。

対策2. 犬用の靴を活用するメリット

靴を噛む犬

動物病院での治療を行っても舐めてしまう場合には、ワンちゃん用の靴を活用するのも非常に良い方法です。靴には、舐める行動を物理的に防ぐ以外にも、多くのメリットがあります。

メリット1 物理的な保護(舐め防止)
靴を履かせることで、物理的に足先を舐められなくします。エリザベスカラーが苦手な子や、カラーをしていても器用に舐めてしまう子にも有効です。
メリット2 お薬の効果を高める(密閉療法)
塗り薬を塗った後に、ワンちゃんがお薬を舐めとらないように、しばらくの間だけ靴を履かせてあげるという使い方もできます。
この方法は、お薬を舐めとらないという効果だけではなく、「密閉療法(ODT)」として、皮膚の水分量を高い状態に保つことでお薬の浸透・吸収を高め、より効果的にお薬を効かせてあげられる可能性もあります。(※靴が汚れないように、ラップなどで軽く足をカバーしてから靴を履かせてあげるのも良いでしょう)
メリット3 アレルゲンや刺激物からの保護
お散歩のときに靴を履けば、花粉などがアレルゲンになるアトピー性皮膚炎の子では、アレルゲンの侵入を防ぐことができます。また、小石などの刺激から足を守ることもできるので、お散歩後によく足を舐める子にはとても有効
だと考えられます。
メリット4 危険物からの保護
健康な子でも、夏場の熱いアスファルトから足を守ったり、農薬や殺虫剤など、ワンちゃんの足につくのが好ましくない薬品などが付着することを防いだりする効果も期待できます。

対策3. ストレスケアと環境整備

ワンちゃんのストレス解消法として、お散歩にたくさん行ったり、快適な飼育環境(室温20~25℃、湿度40~60%が目安)を整えたり、スキンシップをたくさんとったりするなどの方法があります。
その中でも、皮膚科で診療していて特に効果を感じるのは「ノーズワーク」です。
ノーズワークは、犬の優れた嗅覚を使ったドッグスポーツの一種で、特別な道具がなくてもお家ですぐに実施できます。おやつやフードを探させる簡単なゲームから始められます。
「愛犬とお家でどんな風に遊んでいいかわからない」という方も、ぜひ一度試してみてください。ワンちゃんが本来持つ能力を使うことで、大きな満足感とストレス解消につながります。

まとめ

ワンちゃんが足先を舐める行動には、かゆみ、痛み、違和感、ストレスなど、様々なサインが隠されています。舐め続けることで皮膚の状態がさらに悪化し、「異物肉芽腫」のような外科手術が必要な状態になってしまうこともあります。
まずは動物病院で原因をしっかり突き止め、適切な治療を受けることが第一歩です。
その上で、お薬を塗った後や、お散歩でアレルゲンから足を守るために犬用の靴を活用するなど、ご家庭でも上手にケアを取り入れて、ワンちゃんの健やかな足を守ってあげましょう。


本記事の執筆者

ひだまり動物皮膚科医院 医院長
獣医師 伊佐 桃子

大阪・福井で犬猫の皮膚病を診察。特に食物アレルギー、アトピーで困っている犬猫や、ご家族に最適な個々に合わせた治療を成功へ導くためのコミュニケーションにも注力している。


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